小売業や製造業では在庫管理業務が重要です。在庫が多過ぎると不良在庫を抱えてしまい、一方で少な過ぎても機会損失になります。
どのようにすれば適切な在庫管理ができるのか疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、在庫回転率の計算方法や重視する理由・改善する方法について解説します。
在庫を抱えることなく、適切な在庫管理をしたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
在庫回転率とは
在庫回転率とは、倉庫内にある商品の在庫が一定期間にどのくらい入れ替わったかを数値にして表すことです。数値が高い場合と低い場合の特徴は、下記の表にまとめています。
在庫回転率が高い場合 | 倉庫内の商品が出入りするサイクルが速くなるので、その分商品が売れていることになります。 |
在庫回転率が低い場合 | 在庫が長く倉庫にとどまっているので商品が売れるまでに時間がかかる状態です。 |
在庫を多く保有すると、管理コストがかかるため企業は在庫回転率を高めるような施策を行う必要があります。
とはいえ、数値の低い商品が売れないわけではありません。なぜなら、商品の性質・種類により在庫回転率の平均値は変わるからです。
在庫回転率の計算方法
在庫回転率の計算方法は、下記の2種類です。
- 在庫数による計算方法
- 金額による計算方法
ひとつずつ見ていきましょう。
在庫数による計算方法
在庫数による計算式と実際の数字を用いて解説をしていきます。
在庫回転率 | 総出庫数÷平均在庫数 |
平均在庫数 | (期首在庫数+期末在庫数)÷ 2 |
【1年間の出庫数2000個、期首在庫数60個、期末在庫数140個】の計算例を紹介します。
期間中の平均在庫数 | (60個+140個)÷2=100個 |
在庫回転率 | 2,000個÷100個=20 |
金額による計算方法
金額による計算方法と実際の数字を用いて解説をしていきます。
在庫回転率 | 期間売上原価÷期間平均在庫金額 |
期間中の平均在庫金額 | 期首在庫高+期末在庫高÷2 |
売上原価 | 期首の在庫金額+年間の仕入れ高-期末の在庫金額 |
具体的に数字を用いて在庫回転率を求めた例を解説します。
売上総額 | 6,000万円 |
期首在庫金額 | 1,800万円 |
期末在庫金額 | 2,200万円 |
平均在庫金額 | 1,800+2,200÷2=2,000万円 |
在庫回転率 | 6,000÷2,000=3 |
金額から求めるときには、一年間の決算書が必要です。一年間の財務諸表などの書類を作成するときや、一年間の動向から経営判断をしたいときに向いています。
在庫回転率の適正値
在庫回転率の適正値は、業種により違ってきます。たとえば製造業では「原材料の仕入れ→製造→出荷」までにかかる期間が長いです。そのため、卸業や小売業よりも在庫回転率が低くなります。
一方で賞味期限がある食材を扱う飲食店の場合は、作業を始めてから終わるまでの時間が短縮されるので在庫回転率が高いです。適正な在庫回転率は、同業他社の数値を目安にするとよいです。業種ごとの在庫回転率を表を用いて紹介します。
業種 | 在庫回転率 |
製造業 | 11.1回 |
卸売業 | 19.9回 |
小売業 | 11.4回 |
生鮮食料品を取り扱う食料品小売業 | 17.1回 |
参考:中小企業の商品回転率
在庫回転率を重視する理由
在庫回転率を重視する理由は、主に下記の3つです。
- 適切な在庫管理が可能
- 顧客のニーズがわかる
- 在庫の動きが把握できる
ひとつずつ見ていきましょう。
適切な在庫管理が可能
在庫回転率の現状と過去のデータを比較すると、適切な在庫管理が可能です。
たとえば、倉庫内にとどまっている商品は販売状況が悪いので、現状の数量で仕入れを続けると過剰在庫になります。過剰在庫は、倉庫の保管コストがかかったり、廃棄コストが発生したりします。
倉庫内にある商品の在庫が一定期間にどの程度入れ替わったかを基準として仕入れを行えば、保管コストや廃棄コストを避けることができ、適切な在庫管理ができるでしょう。
顧客のニーズがわかる
倉庫内にある商品の在庫が一定期間にどの程度入れ替わったか求められると、顧客が求めていることがわかります。
倉庫内にとどまることなく販売されている商品は、一般的には顧客が必要としている商品です。一方で、顧客が必要としていない商品は倉庫で保管するコストがかかり、保管スペースの圧迫につながります。
顧客があまり必要としていない商品は廃棄するか、在庫を減らす対応が必要です。在庫回転率を把握すると、在庫回転率が高い商品を増やしたり、低い商品を減らしたりして顧客のニーズに合わせた在庫管理を行えます。
在庫の動きが把握できる
全体や商品ごとの一定期間の入れ替わりがわかれば、在庫の動きが把握できます。業務を進めていくうえで、日ごろから在庫の動きを確認しておくことが重要です。
商品ごとの販売ペースなどを現状の数値として把握するためにも、倉庫内からすぐに販売される商品と販売されずにとどまる商品の動向に注目しておくとよいでしょう。
在庫回転率を改善する方法
在庫回転率を改善する方法は、下記の5つです。
- リードタイムを短縮する
- 在庫回転率の目標を設定する
- 定期的に在庫状況を確認する
- 定期的に在庫回転率を算出する
- 不良在庫を確認する
ひとつずつ見ていきましょう。
リードタイムを短縮する
在庫回転率を改善するには、リードタイムを短縮する必要があります。
リードタイムとは、お客様が商品を注文し、商品が手元に届くまでの期間です。お客様が注文してから商品が届くまでの期間を短くすれば、顧客満足度が高まり、継続的に購入する顧客の獲得につながります。
リピーター獲得につながると、サイト全体の売上が上がるため、商品が倉庫内にとどまることも少なくなります。
商品を受注してから届けるまでの流れを見直し、リードタイムを短縮できる取り組みを行いましょう。
在庫回転率の目標を設定する
在庫回転率の目標を設定するのも、改善する方法の1つです。
在庫回転率が悪いときは、商品の売上を伸ばすための現場努力が必要です。在庫回転率を1つ上げようなどの具体的な目標がないと、現場で働く従業員のモチベーションにつながりません。
過去のデータ・同業他社と比較して具体的な目標設定をするようにしましょう。頑張れば達成できそうな数値に設定するのも重要です。
定期的に在庫状況を確認する
定期的に在庫状況を確認すると、在庫の動きがリアルタイムでわかり、適正な在庫数が把握できて余剰在庫の削減につながります。
在庫は適正な個数にし、必要以上の在庫を持たないことが重要です。
自社の在庫状況を把握できれば、在庫回転率を上げる際に何をすべきなのかわかるようになります。管理が行き届かず、商品が販売されずに長く倉庫にとどまっている可能性があるので、定期的に在庫状況を確認しましょう。
定期的に在庫回転率を算出する
金額で在庫回転率を算出している場合は、計算できる時期が限定されるので、数値から算出する方法も併用した方がよいです。
たとえば、1年だけでなく、月単位や週単位とこまめに数値から算出すると、商品の正確な動きが把握できるでしょう。
在庫回転率を把握できれば、低下している商品の仕入れ数量を減らすなどの対応をすばやく行うことができます。
不良在庫を確認する
倉庫内にある商品の在庫がどの程度入れ替わったかを示す数値が低下している場合は、不良在庫を確認すべきです。
不良在庫が多いと、入荷する必要がある商品の数が限定され、倉庫に残って商品が販売されないままになる懸念があります。
倉庫内の在庫数を適正に保てれば、不良在庫が発生しにくくなります。
倉庫の整理を行って、どこに何があるのか把握し、しっかりと在庫管理をしましょう。
在庫回転率を算出して売上向上につなげる
本記事では、在庫回転率の計算方法や重視する理由・改善する方法について解説しました。
在庫が多過ぎると不良在庫を抱えてしまい、逆に少な過ぎても機会損失になるため、適切な在庫管理が必要です。
倉庫内にある商品の在庫が一定期間にどのくらい入れ替わったのか算出すると、適切な在庫管理・企業の売上に貢献している商品を把握できます。
在庫回転率がよくない場合は改善していき、さらなる売上拡大を目指しましょう。