株式会社Wacworks 代表取締役社長 舟瀬 
安全在庫の効果的な導入には、事前の計画が欠かせません。この記事では、安全在庫の算出方法や注意点、変動に対する対処法に焦点を当ててくわしく解説します。安全在庫についての見識を深め、自社の事業成長を加速させましょう！
安全在庫とは？
安全在庫は、企業が需要の変動に備え、製品が必要なときに即座に利用可能であるよう確保する在庫の量を指します。
これは予測ミスや生産の変動、およびサービスレベルの維持を目的としています。安全在庫は一定のコストがかかる一方で、企業が迅速に対応し、高いサービス品質を提供するために不可欠です。
適切な安全在庫の維持は、企業が競争力を維持する上で重要な要素といえるでしょう。
安全在庫を持つメリット3つ
安全在庫を持つことには主に3つメリットがあります。ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
販売機会の損失を最小限に抑えられる
安全在庫を維持するメリットのひとつは、販売機会の損失を最小限に抑えることです。需要の予測が完璧でない場合や需要が急激に増加した場合でも、安全在庫があれば企業は需要に柔軟に対応できます。
商品が常に在庫されていることで、顧客は需要が高まった際でも製品を購入でき、企業は販売機会を逃すことなく市場に参入できるでしょう。これにより、競争が激しい状況下で顧客を獲得し、競合他社に対して優位性を維持することが可能となります。
安全在庫を持つことで、企業は市場や需要の変動に対して迅速に対処でき、販売の機会を最大限に活かすことができるでしょう。
余剰在庫の発生を防ぐ
安全在庫を持つ主なメリットのひとつは、余剰在庫の発生を防ぐことです。
需要の予測が完全でない場合、生産や供給の変動が生じる可能性があります。安全在庫を確保することで、需要の予測ミスや変動に即時対応できます。これにより、過剰な在庫を抱え込むリスクを軽減し、仕入れや製造の効率を向上させることが可能です。
余剰在庫を防ぐことは在庫コストの削減や廃棄物の回避にもつながります。企業は効果的な在庫管理を通じてリソースを最適化し、競争力を強化することができるでしょう。
キャッシュフローの改善につながる
安全在庫を持つ主なメリットのひとつは、キャッシュフローの改善に繋がることです。
需給の変動や予測誤差による在庫切れを防ぐことで、企業は製品を常に提供でき、売上を安定化させられます。これにより、収益が一貫して発生し、支払い期日に対応できる余裕が生まれるでしょう。
また、安全在庫により生産や調達プロセスがスムーズになり、取引先との信頼関係が強化されます。適切な在庫量の確保により、生産を滞りなく行えるため、仕入れ先との交渉力も向上が期待できるでしょう。
安全在庫の算出方法4ステップ
安全在庫の適切な量を算出することは、企業が効果的な在庫管理を実現する上で不可欠です。安全在庫の算出は複雑なプロセスです。ここでは、安全在庫を算出するための4つのステップを解説します。
ステップ1：安全係数を設定する
安全在庫の算出のステップ1は、安全係数を設定することです。通常、企業は過去の需要データや供給の変動を分析して、安全係数を算出します。
安全係数の算出には欠品許容率を使います。「欠品許容率」とは、商品が不足しても許容できる割合のことです。安全在庫の計算においては、この欠品許容率を考慮する必要があります。
ただし、欠品許容率そのものは直接的な計算に使用できません。そこで、以下の表に示された安全係数という指標に変換して利用します。
【欠品許容率⇒安全係数】
0.1％→3.10
１％→2.33
２％→2.06
５％→1.65
10％→1.29
20％→0.85
30％→0.53
安全係数は以下のエクセル関数を用いることでも算出可能です。
安全係数＝NORMSINV（１－欠品許容率）
このステップでの正確な設定が、安全在庫の適切な量を確保して需要変動に対処するための基盤へと繋がります。安全係数の設定は慎重に行わなければなりません。
ステップ2：標準偏差を導き出す
ステップ2は、標準偏差を導き出すことです。標準偏差は、製品の需要の変動を評価するための指標であり、これは過去の在庫の使用量（出荷量や販売量）の平均値に対する変動の度合いを示します。
標準偏差は過去の需要データから需要のばらつきを計測し、将来の需要の予測誤差を考慮しなければなりません。標準偏差が大きいほど需要変動が激しいと言え、それに応じて安全在庫の量も増加します。
なお、手計算で導き出すのは大変ですが、ExcelでSTDEV関数を使えば用意に行えます。
ステップ3：リードタイムを設定する
ステップ3は、リードタイムを適切に設定することです。リードタイムとは、商品が注文されてから受け取り可能になるまでの時間のことであり、サプライヤーからの調達や生産にかかる時間などが影響します。
リードタイムの正確な設定は、在庫を補充するタイミングを調整する上で不可欠です。遅延や変動がある場合は、これを考慮して安全在庫量を増減させることで、在庫切れを回避してサービスレベルを向上させることが可能です。
ステップ4：計算式を用いて安全在庫を算出する
最終ステップでは、設定した安全係数、標準偏差、およびリードタイムを考慮して、安全在庫を具体的に算出します。通常、安全在庫は次のような計算式に基づいて求められます。
安全在庫＝安全係数（安全在庫係数）×使用量の標準偏差×√（発注リードタイム+発注間隔）
この計算により、予測誤差や供給の変動、リードタイムの影響を総合的に考慮し、在庫を確保する適切な量が明らかになります。正確な数値を得るためには、標準偏差やリードタイムの計測精度を向上させるとともに、定期的な更新が重要です。
安全在庫を持つときの注意点
安全在庫を持つことは、需要の変動に対処して順調なビジネス運営を支える一方で、いくつかの重要な注意点が存在します。ここでは、安全在庫を持つ際の注意点について解説します。
欠品する可能性は0ではないため在庫をこまめに確認する
安全在庫を保有する際、注意が必要なポイントのひとつは、欠品する可能性は0ではないため在庫をこまめに確認することです。
安全在庫は需要変動に備えているものの、予測外の状況や急激な需要の上昇によっては在庫切れが発生する可能性があります。そのため、在庫監視は欠かせません。
リアルタイムな在庫管理システムや効果的な予測ツールを導入することで、在庫の状況を即座に把握し、需要変動に適切に対処できます。これにより、欠品リスクを最小限に抑え、安全在庫の有効性を向上させられるでしょう。
欠品を防ぐためには、適切なタイミングでの補充や追加発注など、適切な在庫管理が重要となります。
リードタイムは状況に合わせて見直す
安全在庫を保有する際の重要な注意点のひとつは、リードタイムは状況に合わせて見直すことです。
リードタイムは製品が発注されてから顧客が受け取るまでの時間を示し、この期間は常に変動する可能性があります。したがって、定期的にリードタイムを見直し、変動に対応するための適切な調整を行わなければなりません。
これにより、正確なリードタイムの設定が安全在庫の効果を最大化し、在庫切れのリスクを低減できるでしょう。リードタイムの定期的な見直しは、安全在庫管理の鍵となります。
在庫の変動が激しいと安全在庫は機能しない
安全在庫を効果的に活用する際の重要な注意点は、在庫の変動が激しいと安全在庫は機能しない可能性があることです。急激な需要変動に対応できない場合、設定した安全在庫量では足りない可能性があります。
事前に対策するためには、過去の需要パターンやリードタイムだけでなく、市場の変化や外部要因もきちんと考慮しましょう。また、変動の激しい商品や季節的な製品においては、需要予測の精度向上やリアルタイムなデータ分析が役立ちます。
前もって適切に対処することで、変動が激しい状況にも対応でき、在庫切れや過剰在庫といったリスクを最小化することが可能です。
安全在庫を正しく理解して物流の最適化を図ろう！
需要変動やリードタイムの変動、在庫の激しい動きに対処するためには、定期的な見直しや情報収集が不可欠です。リードタイムの適切な設定や標準偏差の把握、状況に応じた在庫の増減が常に求められます
また、急激な変動が予測される商品や季節性のある製品においては、リアルタイムなデータ分析や精密な需要予測が欠かせません。これらの要素をきちんと理解して、安全在庫を効果的に管理し、物流の最適化を図りましょう！
